淡緑,淡紅,淡紫など和らかな色彩に守られるように,新芽が明るい五月の光に輝き,深緑へと刻々と黒みを交えながら木々は変化し,美しい「青春(せいしゅん)」の季は風も光も移ろい
「か黝葉(かくろば)にしづみて匂ふ夏霞 若かる我は見つつ観ざりき」
「北原白秋」観る(みる)という字には「つまびらかに見きわめる」「見くらべて考える」の意があるという。年を重ねて若かりし時に耳にしたり目にしたり体験したことをつらつら考える年齢になり,
「若かる我は見つつ観ざりき」のことが山ほどあるなと,一人思う春愁の宵ではある。